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2022.06.20
10年以上プログラミング教育サービスを提供してきたプロに聞く、情報Iの必修化―ライフイズテックCEO水野雄介さんインタビュー【前編】
2022年度から高校の新学習指導要領が施行され、「情報I」が選択必修となりました。ライフイズテック株式会社 CEO 水野雄介さんは「選択必修化は大きな一歩であるが、最先端のITを先生が毎年アップデートするのは難しい」と語ります。中高生向けにIT・プログラミング教育サービスを10年以上に渡り提供してきた水野さんが思う、情報の授業がより実りあるものになるポイントをお伺いしました。
水野雄介(みずの ゆうすけ)さんプロフィール:
ライフイズテック株式会社代表取締役CEO。
中学・高校生向けのIT・プログライング教育プログラム「Life is Tech !」の提供している。
環境によって子どもが成長できないのはもったいない

――まず、水野さんがライフイズテックを始めたきっかけを教えてください。

水野雄介さん:
もともと15年くらい前に教師をやっていたのですが、教師になったのはもっと子どもたちの可能性を伸ばせるのではないかと考えたのがきっかけです。
社会に出ると「満点」はないのに学校では100点満点を取る勉強をしたり、1つの分野で「1万点」点取れる方が社会では活躍できることもあるのに、試験では80点×5科目を目指したりしますよね。言われたことをそのままできる能力を育てればよかった教育より、もっと良い教育があるのではないかと思い教師になりました。
当時キッザニアなどに長蛇の列ができているのを見ていると「みんなが良い教育、新しい教育を求めている」と思いましたし、自分自身にも「こんな教育があれば良いな」という理想もありました。
だから、会社という形で教育変革に取り組む方がスピード感をもって実行できると思い起業したのです。

――なるほど。ではなぜ中高生向けのプログラミング教育サービスを展開しようと思ったのでしょうか。

まず、僕は中高生というちょうど自立しだす時期がすごく好きなんです。親御さんから何か言われてもあまり響かなくても、第三者が斜めからうまく関わるとグッと伸びる瞬間が好きで、対象を中高生にしました。
プログラミング教育にしたのは、ITやエンジニアリングに興味のある子どもを伸ばす環境が当時の日本には整っていないと思ったからです。教師をやっていたときに、よく昼休みの生徒同士の会話を聞いていました。アニメやゲームの話をしている子が40人中10人くらいいるんですよ。でも当時はまだアニメやゲームというとオタクっぽくみられるし、親御さんや周りから「なんでそんなことやってるの?」と言われてしまう現状がありました。

――たしかに、15年くらい前はそうでしたね。

一方でその頃はFacebookができてiPhoneが発売された時期でもありました。海外に目を向けてみるとエンジニアリングの能力はすでに重宝されていたんです。大人が環境を用意していないだけで彼らの可能性が伸びていないなんて、とてももったいないと思いました。
日本ではIT教育のサービスをやっている企業もなかったので、プログラミングに絞ってスタートさせました。

「環境を用意していないだけで子どもの可能性が伸びないなんてもったいない」
プログラミングは英語以上に重要になってくる

――今年度から高校の新学習指導要領が施行され、情報Iが選択必修化されましたね。そのことについて水野さんはどう感じていらっしゃいますか。

やっと始まったという感じですね。学習指導要領に盛り込まれることが決まったのは2018年頃ですが、諸外国ですと2014〜2016年にプログラミングを必修化したところが多いので。
でも、とても大きな一歩だと思っています。プログラミングやIT、DXなどがこれからの時代に必要なスキルとして捉えられ、必修化されたのは時代の変化を感じます。ただやるべき量はもっと増やした方が良いと考えています。これからは英語よりも必要な能力にもなってくると思っているので、週1時間では足りないのではないでしょうか。

――情報Iで学ぶべき内容自体についてはどう考えていますか。

結構良い内容だと思っています。
AI時代では、どのようなデータを取りそれをどのように活用するか考えるのが非常に重要になってきます。それを加味した形でデータサイエンスを学ぶ内容になっていると思います。
ただ一番大きな課題としてはそれを教える先生がいないことです。今教えている先生は、情報Iの内容は学生時代に習ったことがありません。そんな中で生徒たちに最先端のものを教えて、しかもそれを楽しいと思ってもらうようにするのは、とても難しいことだなと感じます。

――先生が必ずしも専門ではない中で、先生にはどういう役割を期待されますか?

全ての先生が最先端のITを理解して子どもたちに還元しようというのは、難しいと思います。数学や物理は昔からある程度理論が決まっているのですが、ITは毎年毎年変わるので知識のアップデートが必要になるんですよね。
ですので先生はファシリテーション役に徹するという状態が理想だと思います。作りたいものや進捗は生徒一人一人違うので、先生が一対多で黒板で教える時代も終わったと思います。それよりも一人一人がどう伸びていくか、テクノロジーを駆使して先生にしかできないことをやっていく。これがファシリテートだと思います。

プログラミングはものづくりへの欲求から学ぶ

――余談ですが、私はプログラミングを学ばないまま大人になりました。10年後には情報Iを学んだ人たちと一緒に働くことに危機感を覚えているのですが、何から学べばいいのでしょうか。

まずモノを作ってみるのが良いと思います。スマホのアプリやゲーム、ホームページでも良いです。パソコンでものづくりすること自体を好きになるのが重要だと思います。
例えばゲームを作ってみたら、「もう少しデザインしないと使いたくならない」とか「音楽をつけてみたい」とか、ものづくりに対する欲求が生まれてくるんですよね。そこには新たな学びも生まれる。
普通にプログラミングで「Hello, world!(※)」って画面に映るよりも楽しいじゃないですか。だからまずは作りたいものを想像するところから始めるのがいいかなと思いました。

※ Hello, world! … 画面に「Hello, world!」の文字列を表示するプログラムの通称。非常に単純なプログラムであるため、初心者にプログラミング言語を紹介するために使われている。

――なるほど、今朝ちょうど体調にまつわる全てのことを一括で管理できるアプリがあったら良いのにと思っていました。

そういうのが大事ですね。しかも、もしかしたら百万人とかに使ってもらえる可能性があるのが面白いですよね。日常的に感じたちょっとした不便は、同じように不便だと思っている人がたくさんいるんです。
作りたいものがあるから、楽しく学べると思います。


いま先生に求められるスキルとしてファシリテーションが挙げられることが多いのですが、これまでと違ったスキルをいきなり身につけるのは難しいのではないかと思っていました。今回水野さんのお話を伺って、ほとんどの先生が専門ではない情報Iが必修化されたことが、ファシリテーションの必要性や面白さを知るきっかけになれば良いなと感じました。
次回は、最近始まったばかりのデジタル部活「Life is Tech ! School X(ライフイズテック スクール・エックス)」についてです!

執筆:佐藤 春恵

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