interview_thumbnail_kano
2022.02.28
サイエンスコミュニケーションの専門家が考える「科学とは?」ー滋賀大学・加納圭教授インタビュー
2021年12月に、私たち一般社団法人LeaLは滋賀大学教育学部の加納圭先生の研究室に伺いました。 加納先生は理科教育やサイエンスコミュニケーションの分野で長年実践的な研究を続けられており、さらにNHK Eテレの「考えるカラス〜科学の考え方〜」や「カガクノミカタ」といった教育番組の番組委員もされていらっしゃいます。 私たちLeaLは、学びの一つとして「科学」に注目し、科学にまつわる様々なお話を加納先生にお聞きしてきました。
加納圭(かのう けい)先生プロフィール:
滋賀大学 教育学系 教授
京都大学理学部卒業後、同大学院生命科学研究科で修士号・博士号取得。
現在は滋賀大学教育学部理科教育講座で、小中学生向けワークショップの開催など様々な科学コミュニケーションについての実践・研究を行っている。
「科学とは、知らないことが前提のものに挑戦していくこと」

ーーまずは、先生が番組委員を務められた「カガクノミカタ」や「考えるカラス〜科学の考え方〜」などの番組からお話をお聞きしようと思います。これらの番組は、どのようなことをねらいとして作られた番組なのでしょうか?

加納圭先生:
これらの番組は、科学的なものの見方とか考え方が子どもたちに身について欲しい、ということをコンセプトにしています。
なぜそれをコンセプトにしたかというと、昔僕は予備校で教えていた時があって。
予備校で教えていたときに、いわゆる「雑談」っていうのが結構ウケているというか、ものすごく浪人生とか高校生の進路に影響を与えていることがわかったんです。その雑談は何かっていうと、「科学的なことって何だろう」とか「今ホットなトピックって何だろう」とか。大学に行くために勉強している受験生ですら、「何で勉強しているのか」っていう意味を知りたいんです。そこがわからなくて運悪く浪人しちゃうと、なかなか志望校へのモチベーションが湧かない、だけど周りの圧力はすごくて「あなたは〇〇大学に入りなさい」とか言われているうちに「なんとか大学に入りたいな」って漠然とは思うけど、入って何すんねん、みたいなところで結構迷っている人が多いなと思って。
そういう、「何のために理科を勉強してるんだ」みたいなモヤモヤに救いの手を差し伸べられるような活動ができたらなっていうのが、科学的なものの見方とか考え方に注目している背景にあって、番組のコンセプトなんかにもそういうものが入ったらいいなと思っています。

ーーその「科学的な見方」というものは、端的に言うとどういうものなのでしょうか?

科学的な見方っていうのは、端的に言うと「当たり前を疑う」ということとしてまとめられるかなというふうには思いますね。
答えを知らない立場であれこれ検証していって、もっともらしい正解を出していくというものが科学です。
ある受験問題が来たときに「これは知っている問題だから解ける」、みたいなのはあんまり科学的な力を発揮してるわけじゃない。それは既に知っているから解けたというだけであって、本来科学っていうのは当たり前を疑って、知らないという前提のものに挑戦していくって言う形なので。

「安易に答えを教えない」

ーーそういう「科学的な見方」は、例えば予備校ではない小学校とかでも育てることができるものなのでしょうか?

現状の理科でも、答えを知らない前提で考えさせることができると科学的なものの見方を育成できます。
同じコンテンツでも、使い方次第で科学的な思考力をトレーニングするようにも使えるし、単に覚えさせて知識として手に入れさせるというようなこともできる。それはもう先生のさじ加減1つですね。

ーー今の教科書でも工夫次第で、理科の授業で科学というものを教えられるかもしれないと。

もちろん。そういう風にされている先生も一杯いらっしゃると思いますね。
で、もし科学的なものの見方を教えたいのだとしたら、安易に答えを教えない方がいい。
子どもたちは、知らない自分に戻るのっていうのはすごく大変なんです。1回答えを知ってしまうと「もう知ってる」ってすぐ言うんで。だから、知らない自分にリセットするっていうのはめちゃくちゃ難しいんですよ。
初めての単元に入ったときに、どういう問いかけをしてあげてどういうストーリーを我々が紡ぎ上げて子どもたちに考えさせるのか、というのは唯一のチャンスです。けど、そこであっという間に答えを教えてしまったら、もう子どもたちは知らない自分に戻れない。それはすごくもったいないですね。

例えば小学校のときの単元で、形が変わったら重さが変わるのかみたいな単元があって、粘土で何か形を変えたりするのがあるんですけど、面白い授業の先生とかは、ガンダムとかそういうロボット的なのを持ってきて、つま先立ちさせてみる(笑)。
答えを知らない状況でこれをやって子どもたちに考えさせると、みんなあれやこれや言うんですよね。「何かふわっとしてるから軽くなるんじゃない?」とか、そういうことを考えさせてあげる。それはもう知らない子しかできない、考える遊びだと思うんですよ。答えを知っちゃったら「ガンダムのポーズが変わったところでずっと同じ重さでしょ」って思うんですけど、それを元に戻すのは難しい。

ーー安易に答えを教えない、というのはすごく重要なキーワードな気がしますね。

もう一個ハイレベルにいくと、「秤の上でドローンを飛ばしたら、目盛りはどうなるでしょう?」っていうのがあります。
『考えるカラス』ではラジコンヘリでやっていましたね。
例えば秤の上の100 gのドローンを飛ばすと、目盛りはずっと100 gのままなんですよね。

ーーえっ……それはなぜなんでしょうか?

さっきのガンダムの爪先立ちのもう一個ハイレベルバージョンで、ガンダムがドローンで浮いたらどうなるか。やってみると、浮いても目盛りは変わらないんです。

ーー今あれこれと原理を考えている、この頭の中が大事だということですね!

そうそう。
そうやって考える時間こそが科学的な考え方、科学的なものの見方を身につける瞬間で、これが答えを教わってしまうと、知らない自分には戻れない。

ーーなるほど…。

研究室の外に貼られたポスターからも、子供たちへの問いかけに対する工夫が感じられました。

お読みいただいた皆さんにも、科学的な見方を少し体験していただけたのではないかと思います。加納先生に倣い、ここでは目盛りが変わらない仕組みの「答え」は書かないでおこうと思います。

最後に、「学びについて学ぶ」LeaLとして加納先生に「学びとは何か?」についてお聞きしました。
加納先生の答えはこちら:


学びとは・・・
当たり前を疑い、疑問を自ら発見、もしくは解決すること。

教科書や問題集に書かれている答えをすぐに見たり、こたえを鵜呑みにしたりする子が多いのが気にかかっています。
せめて問題集を解く際にでも上記のことをしてもらえたらいいなと思いました。


疑うこと、考えることが科学や学びにとって非常に大切であるということを感じたインタビューでした。
LeaLとしても、今後の学びに生かすべき要素を多く得ることができました。
加納先生、ありがとうございました!

執筆:小池拓也

Twiterでこの記事をつぶやく
この記事をつぶやく
Facebookでこの記事をシェアする
この記事をシェアする