小池:僕たちが心理学を学ぶメリットにはどんなものがあるんですか。
村中誠司さん:
自分の心の動きを知ることによるメリットが大きいと思います。僕自身、心理学を学ぶ前は感情に振り回されやすかったのですが、それは自分の心の中で何が起きているかよく分からなかったからなんです。
でも今は、もちろん感情が揺れ動くことはありますが、揺れ動いているときにどう揺れ動いているのかが分かります。だから対処できるんです。そういう意味で心理学を学ぶことは生活する上で活きているし、自分を落ち着けることができるようになったと思っています。
小池:自分を客観視するという意味で言うと、アンガーマネジメントにも近いんでしょうか。
そうですね。よく客観視した方がいいと言われますけど、まず客観視するのが難しいじゃないですか。つまり物事のどこをどう見ることが客観視するということなのかが難しいと思うんですが、心理学はある程度ガイドしてくれます。
小池:イラっとした時、村中さんの頭の中ではどういう思考が働いていくんですか。
まず「今、イラっとしてるわ」と感じます。
例えば作業している時にチャットやメールを見たときにイラっとしたら、まずは一旦距離を取ってから何がキツかったのか、嫌だったのかを考えます。次に相手がなぜそういう言動を取ったのかを考えます。これはアンガーマネジメントにおける「視点の移動」と呼ばれるものです。その上で自分がなぜイラっとしたのかを考えたり必要なことをしたりします。
瀬戸:分析が大事なんですね。
これって「言うは易し行うは難し」なんですよ。難しいですし100%成功することではない。だから仮にうまくいかなかったとしても「うまくいかないこともあるんだな」と思えるのも、心理学を学ぶメリットかなと思います。
小池:マネジメントできないことに怒っても意味がないんですね。
一回アンガーマネジメントをかじるとできるものだと思ってしまうけど、できないこともあるという認識を持っておくことも必要です。できないとさらに嫌な気持ちになってしまうので。
さらに言うと、自分でコントロールできることかどうかを切り分けるのも大事です。
瀬戸:確かに大事ですね。
例えば、自分がやってしまったことに対して「これからどう振る舞うか」ということはコントロールできますよね。でも、自分が行ったことに対して「相手がどう感じるか」はコントロールできません。だから自分の言動について考えると同時に、自分でコントロールできないところで悩まされないようにしようという切り分けは大事ですね。
今回の記事では広く心理学を学ぶ意義についてご紹介しましたが、本編では村中さんのご専門である「デジタル臨床心理学」について詳しくお話を伺っています。「声の特徴」を解析してうつ病の重症度を測る研究をされている村中さんが、デジタルを使ってどのように「一人ひとりに合ったケア」の実現を目指しているのか。試行錯誤のプロセスを話していただいています!ぜひお聴きください!