小池:図鑑づくりはどのように始めるんですか?
松原由幸さん:
まず「どんな図鑑にするのか」、「どんなチームを作るのか」という骨組みを作ることから始めました。すべての図鑑に共通するのは、文章の執筆や監修を依頼する専門家の検討です。恐竜は現存していない生物ということで全てイラストに起こす必要があるため、絵を描いてもらうイラストレーターさんや、写真を借りる博物館についても検討しました。
そういった座組みを考えながら、図鑑に載せる恐竜のリストを作っていきます。
小池:最新の学研の図鑑には何種類の恐竜が載っているんでしょうか。
プテラノドンやタバサウルスなど、恐竜と同じ時期に生きていた爬虫類たちも含めると420種類ぐらい載っています。日本で売られている子ども向けの学習図鑑で最多掲載数を目指して作りました。でも現在、恐竜は約1,000種類見つかっているんです。
瀬戸:そんなに多いんですね!
その中から証拠が出ていたり情報が多かったり、また学問的に大事なものから優先して選んでいきました。
本当は1,000種全部載せたいですが、そうすると500ページぐらいになってしまうので…。皆さんに手に取っていただきやすいお値段やサイズを考慮して、250ページくらいの図鑑として出版されています。
瀬戸:松原さんが編集された図鑑を読むと科学に本気だなと感じます。「◯◯の可能性があります」、「議論が続いています」という言い回しが印象的でした。
言い回しはすごく気にした箇所なので、そこを読み取っていただけてとても嬉しいです。
今回学研の図鑑をリニューアルするにあたり、編集部全体として監修の先生たちとのコミュニケーションを大事にしようという方向性を改めて確認していました。そこで「恐竜」チームでは、企画立案の段階から研究者の方に参画していただいたのです。
小池:骨組みを作る段階から一緒に作っていたんですね。
その中で、分からないことは分からないと書いたり、両論がある場合は併記したりすることを意識していました。それは科学的であることを担保するだけでなく、「分からない」と知ったらワクワクしてもらえるんじゃないかなと考えているからです。
僕自身そうだったのですが、小学校で理科を習ったときに「世の中ってこういうことなんだな」と分かったつもりになってしまうこともあると思うんです。
瀬戸:確かにありますね。
でも中学生の時に、先生から「教科書に書いてある◯◯って実はまだあんまり分かってないんだよね」と言われて「分かってないのかよ、おもしろいっ!!」と思ったんですよね。だからこそ、分かっていないことにワクワクしてほしいという願いを込めて、手ぐすねを引くように「ここまでは分かっています。ここは分かっていません。うふふ」という気持ちで書いています。
本編では、図鑑の発売直前に新種の恐竜が見つかるというドキッとするハプニング話から、松原さんがこよなく愛する「骨格」の魅力までたっぷりお話を伺っています。ぜひお聴きください!